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ネム

2010/07/20 21:35
作文 ネム


突然の知らせだった。
それは僕が以前勤めていた会社を退社するにあたって、皆が僕の為に設けてくれた送別会の席だった。
少し酔っていたし、もう14年も前の事なので記憶が随分と薄れてきたけど。
送別会が進んで1時間ぐらい過ぎた頃だったと思う。
今となっては懐かしいぶ厚いPHSがブルブルと震えた。
電話に出ると母からだった。

「ネムが死んだよ」

ネムが死んだ。

あまりにも突然だった。
数日前に実家に帰った時には元気な顔を見せてくれたのに。
それは予想だにしない知らせだった。

電話を切った。泣いてはいけないと思った。
隣に座っていた一番信頼していた同僚が電話の内容を聞いてきた。
僕は泣き出すのを我慢して説明した。
だけど我慢できなかった。
ネムの事を説明したら涙がこぼれないはずがなかった。
一旦涙がこぼれはじめたら止まらなくなった。
酔っていたせいもあってか、人前であんなに泣いたのは後にも先にもその時だけだった。

気付いたら号泣している僕に同僚が付き添って駅に向かって歩いていた。



ネムは僕の兄弟のような犬だった。
兄は僕で、ネムは従順な弟だった。
弟だったけれど、いつも見守ってくれる優しい兄でもあったのだけれど。
小学生の頃、しょっちゅう野良犬に追い掛け回されていた。
極度の犬嫌いだった。
逃げるから追いかけられる。当然噛まれた事もあった。
友人宅の小さな愛くるしい犬だって僕には狼並みに怖い存在だった。
そんな僕の元に運命の犬がやってきた。
忘れもしない小学5年生から6年生に進級する前の春休み中の辞校式の日だった。
学校から帰ってくると庭に犬がいた。
犬は玄関近くで眠っていた。
まだ両手にすっぽり収まりそうな小さな子犬だった。
そんな小さな犬でさえ僕は怖くて逃げ出したくなった。
だけど勇気を出して犬に気付かれないようにゆっくりと歩いて家の中に逃げこんだ。
家の中から見るその犬はとても小さかった。本当にまだまだ赤ちゃんと言えるほどだった。
そんなに小さな赤ちゃん犬を見るのは生まれて初めてだった。
あれぐらいなら触れるかもしれない。
僕は更に勇気を出して牛乳をあげた。
これが僕とネムの出会いだった。
ネムをきっかけに僕の犬嫌いは驚くべくスピードで解消された。
犬がこんなに可愛かったなんて。
犬がこんなにも家族のような存在になるなんて。
それを教えてくれた犬だった。
父に叱られ玄関の外に出された時もネムは傍に寄って慰めてくれた。
一緒に海へ行って走り回って遊んだ日もあった。
本当の兄弟のように思っていた。

そんなネムが死んだ。

ネムは死ぬ日をちゃんと選んだ。
実家で一緒に住んでいた姉が前日に結婚式を終えて、イタリアへ新婚旅行に旅立ったその日だった。
もし死ぬのが2,3日早かったら姉に笑顔はなかったかもしれない。
ネムは全てを知っていたかのように死ぬ日を選んだのだった。


あれから14年が経った。
ネムが教えてくれた大切な事を新しい犬が子供たちに教えてくれている。
新しい犬を家族として迎えているけど僕の心の中にはいつもネムがいる。
ネムは骨となって庭で眠っている。

今夜もおやすみ、ネム。


*****************************************

100718ne1.jpg
前置きが長くなりましたが、先日ホームセンターでネムの木というのを見付けて即買いしました。
ネムの木の存在はもちろん知ってましたが実物を見るのは初めてでした。
なかなか可愛い木です。
この木を見る度にネムを思い出す事でしょう。
枯れないように大切に育てたいです。


100718ne2.jpg
この木、夜になるとなんと葉を閉じます。
知らないで買って、最初の夜はもう枯れちゃったのかと僕もうな垂れました。
なかなか楽しい木のようです。



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